術後「合併症」なら、法的責任は発生しないのか? | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

術後「合併症」なら、法的責任は発生しないのか?

術後「合併症」なら、法的責任は発生しないのか?

弁護士 上田 圭介

はじめに

手術後に合併症が生じた場合に、合併症であるから甘受しなければならないと思う人もいるかもしれません。特に、術前の説明で、合併症のリスクについて説明があった場合はなおさらでしょう。 しかし、法律的には、合併症であることを理由に直ちに法的責任が発生しないとは考えません。

合併症には2種類ある

術後合併症とは、一般的に、手術に続発して発症する疾病や病態をいうとされています(医学書院医学大辞典第2版(医学書院、2009年):術後合併症)。この定義から明らかなように、手術の際のミスに起因するか否かを考慮せず、手術に続発さえすれば、術後合併症に該当することになります。 それゆえ、術後合併症には、①手技ミス等に起因するもの(避けることができる合併症)と②不可抗力によるもの(避けられない合併症)に分類できます。 そして、①であれば過失が認められる余地がありますが、②であれば避けられなかった以上、過失は認められないということになります。

裁判例(札幌地判平成17年10月4日)

上記2記載のように分類できることを前提に判断をした裁判例として、札幌地判平成17年10月4日があります。 同裁判例は、内視鏡検査に際して胃に穿孔が生じた事案であり、医師の手技に過失が認められるかが一つの争点になりました。 医療機関側は、「内視鏡検査では、熟達した医師が慎重に操作を行ったとしても、ある程度の頻度で穿孔等の合併症を生じることは避けられ」ず、「医師の本件内視鏡検査中の手技には過失がなかった旨主張し、これに副う書証として」、同検査の際に穿孔が生じた症例を多数紹介する資料及び文献を指摘しました。 これに対して、裁判所は、被告が指摘する資料及び論文は、「いずれも偶発症としての穿孔につき、手技ミス等に起因する事例と不可抗力によるものとを特に区別しないで紹介しているのであって、これにより直ちに本件穿孔が避けられない合併症であったことを窺わせる資料となるものということはできない。」と判断しました。

最後に

以上のように、合併症であることから直ちに避けられない合併症であるといえるものではなく、その結果、合併症であることのみを理由に過失がなかったと判断するものではありません。 また、そのことから当然、術後合併症のリスクを術前に説明したからといって同合併症による損害について法的責任が生じないというものではありません。

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