解決事例.11 インプラント埋入のための上顎洞挙上術に伴う下歯槽神経損傷
【事案の概要】
Eさんは、抜歯して歯のなくなった箇所に上下合わせて、かなりの本数のインプラントを埋入する手術を受けました。
ただ、下顎への埋入は、下顎骨が厚いため、そのままインプラントを埋め込めばよいのですが、上顎の場合、上顎骨の厚みが足りない場合、骨充填して、インプラントが貫通しないようにしなければなりません。
そこで、下顎骨から上顎骨をかさ増しするための骨を採取するのですが、その際、採取する付近に走っている下歯槽神経を傷付けてしまうことがあり、本件でも、そのような事故が起きてしまったのです。
Eさんは、全身麻酔から覚めた後、下顎に違和感を覚え、痺れる感覚が抜けなかったため、その不満により、病院からのインプラント手術費の支払いを拒んでいました。
すると、間もなく、Eさんは、病院から、約500万円の治療費不払いを理由に訴えられてしまいました。
当初は、Eさんが自分で、応戦していました。
そのうち、裁判所の提案により、調停委員の意見を聞くこととなり、その結果、Eさんに有利な意見を述べてもらえました。
ここまではよかったのですが、相手方は、医療訴訟に長けている法律事務所であり、調停委員の意見ももろともせず、猛然と反論してきました。
そのせいか、裁判所からの和解の打診は、Eさんの損害を認めず、敗訴に近い和解額を支払う内容のものでした。
これに愕然としたEさんは、自分一人で戦うことを諦め、当方に委任することを決めたのです。
【解決のポイント】
当方が代理人として訴訟を進めてからも、いったん植え付けられた裁判所の心証を変えるのは容易くありませんでした。
このため、本来、最後に行われる原告本人の尋問及び被告歯科医師の尋問終了後も、先の状況を変えるまでに至らず、苦心しました。
それまでの医療訴訟の経験から、中立的な立場の医師、歯科医師の意見であれば、専門委員であろうが、調停委員であろうが、鑑定人であろうが、裁判所はこれを重視する傾向があったはずなのに、本件では何ゆえ、そうなっていないのかを考えました。
すると、調停委員の歯科医師は、インプラント手術の経験はあっても、下顎骨からの骨採取の経験が余りない点で、裁判所の信用が今一つであったことに気付きました。
そこで、当方は、骨採取の経験豊富な歯科医師を呼んで、いきなり、証人尋問することを提案し、裁判所に採用してもらいました。
これはかなり、裁判所の心証を動かすのに役立ちました。
その結果、逆転、歯科医師の過失による神経障害が後遺症として認められ、500万円の損害賠償請求権と治療費500万円の請求権とが相殺されるとの認定を得ることができたのです。
医療事業部 担当弁護士の解決結果に対するコメント
陳述書の提出もない証人尋問は、異例の方法でしたが、本件ではそれが奏功しました。
また、証人尋問後、形勢が不利に転じたことを認識した病院側では、Eさんの下顎骨のCT検査データから、当時の骨採取状態を3D化すると言ってきました。
ところが、その後、3D化は困難であったとして、別な攻め口で反論がなされたので、奇異に感じ、当方で、3Dプリンターによる下顎骨の再現をしてみたのです。
すると、調停委員の意見に沿い、病院側の意見が排斥される決定的な切削痕が3D化されて出てきました。
これもダメ押しとなり、全面勝訴に繋がったと感じております。
文責:弁護士法人ALG&Associates
医療事業部長
代表社員・弁護士 金﨑浩之
医療過誤・医療ミスのご相談
-
24時間受付・年中無休
-
メール相談受付
メールフォームはこちら
-
全国対応遠方の方々も安心して
ご相談ください