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羊水塞栓症を原因とするDICと期待権の侵害

【妊娠・分娩の医療過誤】羊水塞栓症を原因とするDICと期待権の侵害

羊水塞栓症とは

羊水塞栓症とは、羊水成分が母体血中に流入し、急性呼吸循環不全をきたす疾患或いは症候群をいいます。

2万~3万分の1程度の発症率で稀な疾患ですが、母体死亡率は60%~80%と非常に高く、急激に進行して産科DICとなります。
従って、早期治療が大変重要であり、原則としては、ショック自体の治療とともに、基礎疾患の除去や止血を並行します。

詳細については、「分娩の基礎知識 (8)羊水塞栓症」の項目もご覧ください。

判例(大阪地裁平成23年7月25日判決)

(1) 本事案は、出産後に羊水塞栓症を原因とするDICに陥り、転送先で死亡した患者に関し、電話連絡の過誤により輸血の緊急手配が30分程度遅れた問題があった事案です。
裁判所は、被害者が羊水塞栓によるDICと出血性ショックが生じ、その後、多臓器不全が回復せずに死亡したものと認定した上で、

①止血措置に関する注意義務違反、
②輸血の準備・実施の遅滞に関する注意義務違反、
③子宮摘出実施に関する注意義務違反、
④転送時期についての注意義務違反、
⑤薬剤投与方法に関する注意義務違反は全て認めず、
⑥輸液に関する注意義務違反については一部を認めたものの、
⑦適時の輸液等がなされていたとしても、被害者の救命可能性について高度の蓋然性があったとはいえないとして、⑥と結果との因果関係を否定し、
⑧当時の医療水準を前提とした治療をしても、被害者が生存できたとする相当程度の可能性はないと判示しました。

ただ、「一刻を争う緊急事態に、電話連絡の過誤により30分も輸血の手配が遅れたこと」について、被害者が当時、「弛緩出血によるDICを疑われ、可能な限り速やかに輸血されるという治療行為を受けることを期待できた」にも関わらず、輸血の手配の遅れという「著しく不適切な」措置により、期待権を侵害されたと認定し、慰謝料として66万円を認めました。

(2) 羊水塞栓症の発症率が極めて低い稀な疾患であること、発症すると進行が急速であること等から、過失や結果回避可能性を認定すること自体はできなかったものの、死亡という重大な結果や、深刻な事態における電話連絡の過誤の存在に対する遺族感情を考慮した判断だと思われます。

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