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脳出血と遷延性意識障害(植物状態)

脳出血と遷延性意識障害(植物状態)

はじめに

脳卒中とは

脳卒中は、血管が詰まって起こるものと、血管が破れて起こるものに大別されます。
このうち、前者(血管が詰まって起こるもの)を脳梗塞といい、脳梗塞は、①アテローム血栓性脳梗塞、②ラクナ梗塞、③心原性脳梗塞に大別され、脳卒中死亡の約60%を占めます。血管が詰まって起こるものとしては、このほかに、一過性脳虚血発作もあります。これは、血管が詰まってから24時間以内に回復するものであり、脳梗塞の予兆とされます。
これに対し、後者(血管が破れて起こるもの)には脳出血とくも膜下出血があります。脳出血は、脳内の細い血管が破綻して出血するものであり、脳卒中死亡の約25%を占めます。他方、くも膜下出血は、脳を覆う3層の膜(内側から、軟膜、くも膜、硬膜)のうち、くも膜と軟膜の間にある動脈瘤が破綻し、膜と膜の間に溢れた血液が脳全体を圧迫するものであり、脳卒中死亡の10%強を占めます。

脳卒中を発症した場合、脳の損傷部位や範囲によって植物状態にまで陥ることがあり、発症後の診療を巡って紛争化することもあります。本稿では、脳出血と遷延性意識障害について簡単に概略を示します。

脳出血

脳出血、高血圧性脳出血、被殻出血の定義、病態、頻度

脳出血とは、脳実質内に血腫を形成した病態をいう[1]
脳卒中データバンク2009によれば、脳出血の81.9%を高血圧性脳出血が占め、最も高頻度である[2]。高血圧性以外の脳出血の原因としては、動静脈奇形破裂、脳動脈瘤破裂、もやもや病、血液凝固能異常、脳腫瘍、外傷などがある[3]
高血圧性脳出血は、好発出血部位でいえば、その40~50%を被殻出血が占め、最も高頻度である[4]

高血圧性脳出血発症の機序

高血圧が持続すると、中膜障害、内膜の透過性の亢進、動脈壁内への血漿成分の侵入、さらに動脈壁は壊死(血漿性動脈壊死)となり、その結果、動脈壊死に陥った壁には微小動脈瘤(microaneurysm)が生じる。この微小動脈瘤が破綻し出血巣が形成される[5]

脳出血による脳損傷

高血圧性脳出血の病態は、血腫による出血部位の脳実質破壊による一次的脳損傷と、圧迫による周囲脳の二次的脳損傷とに分けられる[6]
脳出血は出血の容量に見合った脳組織の破壊を確実に伴い、一旦生じた大きな脳出血による脳局所機能喪失を回復することは叶わない。加えて、血腫や続発水頭症により圧迫された脳の二次傷害も来しうる。従って急性期診療においてはまず、血圧管理などにより出血拡大を防ぐことが重要である[7]
血腫の圧迫で周辺脳に虚血(圧迫虚血)が生じ、その程度に従い病態が進行する[8]
圧迫虚血により血腫周辺脳に不可逆的変化が生じると予後に影響することがある[9]
血腫周辺脳は継時的に変化し、やがては回復不能な器質的変化に至る。血腫が小さく周辺脳への圧迫も軽ければ、このような器質的変化が生じても範囲は僅かであり予後へ影響することも少ない。しかし、血腫が大きく周辺脳が広範囲に強く圧迫されれば、このような器質的変化も拡がり予後に影響する[10]
要するに、脳出血が生じると、進行性・継時的に脳が不可逆的な器質的損傷を受け、その程度に従って予後が悪化するので、直ちに血圧管理をして出血拡大を防ぐ必要性が高い。

遷延性意識障害 [11]

病態

遷延性意識障害(植物状態)とは、重篤な脳損傷により昏睡に陥った患者が、救命措置の結果脳幹機能が回復し覚醒するようになったものの、大脳半球の永続的な障害が依然続いている状態である。運動、感覚などの動物的機能や精神活動は失われているが、食物の消化・吸収・排泄、心肺機能などの植物性機能は残されている。また、睡眠・覚醒の反応はある。

診断

下記6項目を満たす状態が3か月以上継続した場合、遷延性意識障害と診断される。
①自力移動不能。
②自力での摂食不能。
③糞尿は失禁状態。
④目で物を追うことはできるが、認識はできない。
⑤「手を握れ」、「口を開けろ」などの簡単な命令に応じることもあるが、それ以上の意思の疎通は出来ない。
⑥声は出すが、意味のある発語はできない。

予後

遷延性意識障害に陥ると、社会復帰は皆無に等しい。

[1]医学書院「医学大辞典」脳内出血
[2]橋本信夫監修「脳神経外科診療プラクティス1脳血管障害の急性期マネジメント」(文光堂,第1版,2014)22頁
[3]同上22頁
[4]窪田惺著「脳神経外科バイブルⅠ脳血管障害を究める」(永井書店,改訂第2版,2009)193頁
[5]同上191頁
[6]同上191頁
[7]橋本信夫監修「脳神経外科診療プラクティス1脳血管障害の急性期マネジメント」(文光堂,第1版,2014)5頁
[8]同上23頁
[9]同上23頁
[10]同上24頁
[11]窪田惺著「脳神経外科バイブルⅠ脳血管障害を究める」(永井書店,改訂第2版,2009)37,38頁

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