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敗血症とは|症状・診断・治療・病態生理について

敗血症敗血症とは|症状・診断・治療・病態生理について

敗血症とは

敗血症(sepsis)とは、感染巣から病原菌・毒素が血液中に侵入して全身性の過度の炎症反応を引き起こす重篤な臨床症状を指します。

全身性の炎症反応症候群をSIRS(systemic inflammatory response sundrome)と言いますが、このSIRSのうち、感染を背景としたものが敗血症です。
起炎菌の多くは、グラム陰性桿菌又はグラム陽性球菌であると言われています。

敗血症は、特に外科の分野で問題になります。というのは、大きな手術は、周術期管理がしっかりしていても、感染のリスクが常にあるからです。また、敗血症の大部分が院内感染だと言われており、患者さんが亡くなられると医療紛争に発展しやすいと思われます。その意味でも、医療事件を扱う弁護士としては、敗血症に関する知識と理解が求められます。

敗血症は、それ自体重篤な病態なのですが、病態が進行すると重症敗血症(severe sepsis)に至り、さらに悪化すると敗血症性ショック(septic shock)に発展し、最終的には多臓器不全(multiple organ failure, MOF)を引き起こし致死的な状態に陥ります。特に、重度の乳酸アシドーシスに陥り多臓器不全を呈してくると致命的とされます。

したがって、手術の際には、敗血症にならないような予防対策が重要となり、仮に敗血症を発症してしまったとしても、それを早期に発見し適切な治療を行うことが重要となってきます。敗血症の早期診断ができないと、敗血症性ショックからMOFへの進展は避けられないとさえ言われています。

敗血症の症状

症状は軽度なものから重度のものまで観察されますが、敗血症によくみられる症状は、①38℃以上の発熱又は36℃以下の体温低下、②心拍数90/分以上の頻脈、③20回/分以上の頻呼吸、④32㎜Hg以下の二酸化酸素分圧、⑤12000以上又は4000以下の白血球数などです。
もっとも、これらの基準は、現在では診断に役立つほど正確な指標ではないとされており、限界があるそうです。
そして、敗血症患者の約40%が敗血症性ショックに合併するそうです。

敗血症性ショックについて

敗血症性ショックには、ショックの初期症状であるhyperdynamic stateと、ショックが重篤化したhypodynamic stateの2段階があります。

まず、hyperdynamic stateでは、動脈が拡張して末梢動脈の血管抵抗が下がります。動脈の拡張と末梢の血管抵抗の減少は血圧を低下させる要因ですから、生体は、これに対する防衛策として心拍出量を増加させることで対応します。正常な血圧を維持しようとカラダが頑張るからです。
このように初期段階で来る敗血症性ショックをwarm shockと言い、この段階で敗血症の診断を下し遅滞なく適切な治療をほどこせば、奏功する可能性も十分あると言われています。

しかし、その後、心拍出量が下がり、cold shockの段階に入ると、症状は重篤化していきます。この段階になると、治療抵抗性が上がり、治療が奏功しない可能性が高くなるそうです。
したがって、なるべく早期に敗血症の診断をつけて治療を開始することが救命の鍵を握ると思われます。

敗血症に合併するDIC、多臓器不全について

感染などを契機に単球をはじめとする免疫担当細胞や血管内皮細胞から様々なサイトカインが放出され、血管内凝固活性が起こり、血管内でトロンビンが産出されます。その結果フィブリノゲンがフィブリンとなり、凝固第13因子によりフィブリンポリマーとなります。その後血小板や赤血球等が粘着し、血管内血栓を形成します。その結果、その血栓が各臓器の血流を障害し、多臓器不全を招来します。

このように、敗血症から、DICが発症し、その後多臓器不全と陥るのです。

敗血症の原因

身体の免疫力が低下している場合などに身体に細菌(ブドウ球菌、グラム陰性菌、髄膜炎菌など)が侵入し、身体内で細菌の増殖を防ぐことができずに細菌が増殖することで起こります。

血流乗って、様々な臓器へと細菌が運ばれ、感染が起こると、多臓器不全は発症します。

感染ルート

・尿路-大腸菌、緑膿菌、腸球菌など
・肺炎-緑膿菌、黄色ブドウ球菌、クレブシエラなど
・肝、胆道-大腸菌、クレブシエラ、腸球菌、バクテロイデス

敗血症の診断方法

細菌への感染の他、次の①~④のうち2つ以上に該当する場合、敗血症であると診断できます。

①体温が38℃超または36℃未満、
②心拍数が90拍/分超、
③呼吸数が20回/分超、
④白血球数が12000/立方ミリメートル超または4000/立法ミリメートル未満

SIRS診断基準の長所・短所

長所:早期に敗血症と診断し、治療を開始できる。
短所:非特異的である。

SIRS基準の見直しと敗血症診断基準(日本版敗血症診療ガイドライン)

① SIRSの4項目
② CRPの上昇(但し、肝機能低下時には上昇しないことがあります)
③ 血圧低下<90mmHg
④ 血清クレアチニン値の増加>0.5mg/dL、乏尿
⑤ 血清総ビリルビン値の増加>4mg/dL
⑥ 機能的イレウス:腸蠕動音の消失
⑦ 高乳酸血症:乳酸値>1mmol/dL
⑧ 低酸素血症
⑨ その他

※敗血症診療ガイドライン2012参照
※SSCGについて

敗血症の治療方法

敗血症に対する治療の中心は輸液です。

前述したように動脈・細動脈が拡張し(血圧低下要因)、また血管透過性の亢進により循環血液量も減少しているため(これも血圧低下要因)、大量輸液による蘇生がなされるようです。
0.9%生理食塩液は、CVP(中心静脈圧)8㎜Hg、PAOP12~15㎜Hgを目標に投与され、低血圧を伴う乏尿の患者に対してでも禁忌にならないそうです。

輸液によりこれらの目標値に達しても血圧の回復が見られなければ、ドーパミンなどの昇圧剤も投与されます。
また、起炎菌に対する治療も同時に必要となりますので、抗菌薬である抗生物質も投与されます。

敗血症ショックをきたしている場合にはICUで管理がされます。

なお予後について、これはアメリカの資料ですが。敗血症患者全体に対する死亡率は約15%、重症敗血症患者の死亡率は約20%、敗血症性ショックに発展した患者の死亡率は45%に及んだとされる報告もあります。

治療戦略(敗血症診断ガイドライン)

① 初期蘇生
② 人工呼吸管理
③ 血糖コントロール
④ 栄養管理
⑤ ステロイド療法
⑥ DIC]対策
⑦ 急性血液浄化療法
⑧ 免疫グロブリン療法
⑨ タンパク分解酵素阻害薬
⑩ 感染症治療

抗菌薬治療

経験的抗菌薬投与のタイミング

診断後、1時間以内に経験的抗菌薬投与を開始します。

感染症、原因菌別の経験的治療薬

経験的治療では、原因感染症を推定し、その感染症で疫学的に頻度の高い原因菌を十分にカバーできる広域抗菌薬の投与を行います。

適切な経験的治療を行うためには、原因となった感染源を推定し、感染症が起きた場所や医療行為の関連の有無などを加味し、原因となる微生物を想定します。

そして、「考えやすい原因」として、「カテーテルや医療行為関連尿路感染症」が考えられる場合、「想定される原因菌」は「大腸菌、緑膿菌、腸球菌」であり、「推奨薬」として、「TAZ/PIPC,MEPM,または、CPFX」が推奨されており、「注意事項」として「緑膿菌を含むグラム陰性桿菌および腸球菌のカバーを外すべきではない」とされています。

標的治療薬

原因菌が確定したら、感受性結果を評価し、抗菌薬を標的治療薬に変更します。

敗血症の病態生理

敗血症の進展

① 敗血症→②重症敗血症→③敗血症性ショック
① hyper-dynamic stae → ②hypo-dynamic state

重症敗血症とは

① 臓器障害や臓器灌流異常又は低血圧を認めるもの
② 指標としては、乳酸アシドーシス、乏尿、意識混濁

敗血症性ショックとは

① 十分な輸液負荷を行った後でも低血圧が改善しない
② 収縮期血圧90mmHg、または通常より40mmHg以上低下(但し、心原性低血圧を除く)

hyper-dynamic stateとは

① 心拍出量の増加、頻脈
② 血管拡張に伴う血管抵抗の低下とそれに伴う低血圧
③ 低血圧であるにもかかわらず末梢が温かい(warm shock)

※SIRSの結果、末梢血管が拡張するが、代償的に心拍出量を増加しようとする生体反応

hypo-dynamic stateとは

① 心拍出量の減少、除脈
② 血管拡張に伴う血管抵抗の低下とそれに伴う低血圧
③ 心拍出量の減少に伴い、末梢が冷たくなる(cold shock)

※hyper-dynamic stateから離脱できないと、hypo-dynamic stateに移行し、救命困難となる。

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)

① 初期段階では、血管透過性亢進→肺水腫→肺胞虚脱、コンプライアンス低下、無気肺
② 肺高血圧を高頻度に合併

DIC(播種性血管内凝固)

① 大量の微小血栓が播種される(血小板の減少)
② 出血傾向の増加

医療事件のうえで問題となりやすい場面

医療事件において、患者さんの直接死因が敗血症とされているケースがあるが、敗血症に対する処置自体の不適切性が問題となる場合よりも敗血症に先行して発生した肺炎などの処置の不適切性が問題となる場合が多いように思われる。

参考文献
・「メルクマニュアル・第18版」(日経BP)594頁以下。
・斉藤厚・那須勝・江崎孝行編集「標準感染症学・第2版」(医学書院)211頁以下。
・品川長夫著「外科医のための抗菌薬療法」(医薬ジャーナル社)290頁以下。
・岩田健太郎・宮入烈著「抗菌薬の考え方、使い方ver3」(中外医学社)
・浅利誠志著「実践から学ぶ!治せるMRSA感染症」(最新医学社)
・細川直登著「感度と特異度からひもとく感染症治療のDecision Making」(文光堂)
・三鴨廣繁監修・坂野昌志著「もう迷わない!抗菌薬Navi」(南山堂)
・並木昭義・今泉均著「敗血症性ショック 新たなる進展」(南江堂)
・織田成人監修「医療スタッフのためのやさしく解説!敗血症診療ガイドライン」(秀潤社)
・山口大介監修「敗血症診療ガイドライン2012」(ライフ・サイエンス)

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