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素因減額とは

素因減額とは

素因減額とは

「素因」(そいん)とは、損害の拡大・発生の原因となった被害者の素質を意味します。素因には、「ヘルニアに罹患していた」といった器質的・解剖学的な「身体的要因」と、「精神的に打たれ弱かった」といった「心因的要因」に区別されます。
交通事故の場合には、被害者の「素因」が、事故により生じた傷害の増額に寄与したといえるようなときには、加害者側から、素因減額の主張がされることが少なくありません。このような主張に関し、最高裁は、『身体的特徴が疾患に当たらない場合には、特段の事情がない限り、損害賠償の額の減額にあたって考慮しない』(最第3小判平8年10月29日交通事故民事裁判例集29巻5号1272頁判タ947号93頁)としており、裏返すと、『疾患』にあたる場合には素因減額を認めています。

医療過誤の場合に素因減額が認められるかどうか

上記の交通事故の場合における最高裁の基準を、医療過誤の事案に妥当させると、患者側に多大な不都合が生じます。
つまり、患者は、まさに『疾患』の治療のために医療機関を受診しているのに、医療ミスがあったときにその『疾患』を理由として損害賠償額が減額されることは不当ではないか、ということです。「癌の治療のために病院に行ったら医療ミスにあった上、どうせ癌で余命が短かったのだからと損害額が減額されてしまった」という結論が不当であることは明らかです。

そのため、医療過誤の場合には、

『診療の対象である病的状態は、まさに診療の対象であるのであるから、素因減額の対象とはならないし、医師が認識した又は認識することが期待できた病的状態は、素因減額の対象とはならないと思われる』

との見解が有力です (福田剛久ら編「最新裁判実務体系2 医療訴訟」(株式会社青林書院、平成26年、初版)691頁以下)。
一方、

『診療の対象ではなく、医師の予見又は認識可能性がない疾患については、素因減額の対象となる』

とされます(同693頁)。
そのため、患者側代理人としては、「素因」として主張された当該疾患が、診療の対象となっていたことや医師の認識可能性があったことに関し、患者の主訴、医療機関の性質等を踏まえて緻密に主張立証する必要があるといえます。安易に、「医療過誤でも素因減額されることはやむを得ない」との考え方は、厳に慎むべきです。

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