MENU

救急医療における問診義務・検査義務・療養指導義務に関する裁判例

医療過誤・医療ミスのご相談はこちら

救急医療における問診義務・検査義務・療養指導義務に関する裁判例

救急医療の性質

救急医療は、その性質として、患者に対して迅速かつ適切な検査や処置を行わなければ患者が死亡する、あるいは、患者に重大な後遺症が生じる危険性が高いケースがあることなどの性質があります。

このため、救急医療行為を行う医師ら医業従事者は、迅速に患者のバイタルサインや身体所見をチェックしたうえで重症度など患者の様態を適切に把握し、患者の様態に応じた処置を行うことが求められます。

救急医療機関の分類

日本の救急医療機関は、重症度別階層制度を前提として、第一次救急医療施設、第二次救急医療施設、第三次救急医療施設に階層化されています。
それぞれの役割については、以下の通りです。

第1次救急医療施設

独歩にて来院するなど、比較的軽症の患者に対し、夜間・休日の外来診療を行う医療施設です。

第2次救急医療施設

救急搬送されてくる患者や、第一次救急医療施設から転送されてくる患者など入院治療が必要と考えられる比較的重症な患者を受け入れる医療施設です。

第3次救急医療施設

第2次救急医療施設では対応することができない重篤な様態の救急患者に対する診療を担当する医療施設です。

救急医療における医療水準

医療水準とは

医療水準とは、医師が診療や治療行為を行う際に求められる注意義務の水準を指し、最高裁は「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」により決定されるとしています。

そして、個別具体的な場面において医療機関に求められる医療水準は、当該医療機関の性格や所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮したうえで具体的に決定するものと考えられています。

救急医療における医療水準

参考となる裁判例として、京都地判昭和52年8月5日判時892号91頁があります。

同裁判例は、当該医療機関が救急医療施設である以上は患者に対してふさわしい診療体制をとって診療を行い、当該病院において手に負える患者であるかどうかを見きわめたうえで、もし当該病院で手に負えない患者だと判断したら即刻然るべき医師を招くなりその処理の病院へ送って適切な処置を仰ぐべきである旨を判示しています。

この裁判例を前提とすれば、当該救急医療機関に要請される医療水準は、重症度別階層制度などによる当該医療施設の性質、設備環境や人員の配置状況等を前提としたうえで、個別具体的に決定されるべきであると考えることができます。

ただし、救急医療施設(救急告示医療施設)は設置条件として「救急医療について相当の知識及び経験を有する医師」が常時診療に従事していることが条件であり、医師は「救急蘇生法、呼吸循環管理、意識障害の鑑別、緊急手術要否の判断、緊急検査データの評価、救急医薬品の使用等について相当の知識及び経験を有する」医師であることが必要とされていますので、仮に担当医師の専門外の診療科目における救急診療行為であっても、当該救急医療施設で必要とされる診療範囲では、直ちに医師の注意義務の程度が軽減するとはいえません。

救急医療の問診における注意義務

問診行為は医師が患者の様態などを把握しその後の診療方針を立てるために必要かつ重要な行為であるため、医師には迅速かつ正確に問診を行うべき問診義務があります。

自身の疼痛や苦痛をもっとも把握しているのは患者本人であるため、医師は直接患者本人に問診を行うことが望ましいことは言うまでもありませんが、救急搬送されてくる患者の中には、交通事故により重傷を負い意識が無いまま搬送されてくる者や、自宅で意識を失って倒れているところを家人に発見されて搬送されてくる者など、意識を失っていたり意識がもうろうとしている者も少なくなく、患者本人に対する問診が十分に行えない場合があります。

このような場合には、医師は患者の家人や付添人などに問診を行うべき義務を負います。

問診義務をめぐる裁判例

仙台地判昭和63年6月28日判時1299号128頁

交通事故による受傷者が腸管破裂を原因とする穿孔性腹膜炎により死亡したことにつき、医師に適切な経過観察を怠った過失があるとされた事例

東京地判平成18年7月13日

転倒により救急車で病院に搬送された患者が、左大腿骨頚部骨折、骨盤骨折の疑いありとの診断で入院したものの、数時間後に意識レベルが低下し、頭部のレントゲンとCT検査を施行した結果、患者に頭蓋骨骨折、硬膜下血腫、脳室内出血が確認され、脳神経外科がある他院に転送されて開頭血腫除去術を受けたが患者が死亡したことにつき、医師が事故態様等についての詳細な問診を実施していれば、患者が外傷性健忘に陥っており、頭部外傷の疑いが残ることを容易に認識することができ、頭部のレントゲン検査ないしCT検査が実施されることになったであろうことが認められるとして医師の問診義務違反を認めた事例

救急医療の検査における注意義務

医師は、救急患者に対する問診だけではなく、バイタルサイン(生命徴候)や血液検査、尿検査、心電図検査、レントゲン撮影、CT検査などを行い、患者の状態を客観的に把握したうえで以後の治療方針を決定します。
すなわち、検査は治療方針を決めるために非常に重要なものですが、あらゆる検査を行うことは現実的ではないため、医師がどの範囲で検査義務を負うべきかは、患者の重症度や緊急性を考慮して決められます。

検査義務をめぐる裁判例

東京地判平成11年2月24日判タ1072号216頁

自殺目的で高所から飛び降りた患者が救急医療機関(第一次救急医療機関)に搬送されたが、当直医は胸部レントゲン撮影を施行しなかっただけでなく腰背部のレントゲン写真に異常所見があることを見落とした結果、胸腹内臓損傷により患者が死亡したことにつき医師の注意義務違反を認めた事例

横浜地判平成21年10月14日判時2069号98頁

腹痛を訴えて救急搬送された小児が絞扼性イレウスで死亡したことにつき、医師が必要な検査を怠ったとして、医師の注意義務違反を認めた事例

救急患者に対する療養指導義務など

救急患者に対し、当該病院にそのまま入院させて診療を行うべきか、他院に転送すべきか、外来での対応でよいかを決め、患者に伝える必要があります。
しかし、どのような場合に入院あるいは他院への転送をさせなくてはならないのか、外来での対応でよいのかは一概に決めることはできませんので、個々の患者の状態により個別的に判断するしかありません。

療養指導義務をめぐる裁判例

広島地判平成11年3月29日判タ1069号226頁

交通事故による患者が搬送先の病院で医師の診察を受けたところ、腸管損傷の疑いがあったが開腹手術しなかった結果、容態が悪化して患者が死亡したことにつき、医師の開腹手術を翌日まで遅らせた措置に過失を認めた事例

大阪地判平成3年1月28日判タ779号253頁

腹痛を訴える救急患者を帰宅させ、自宅にて経過観察させたが、医師が家族に対し患者の観察方法、観察内容や緊急時における対応に関する指示説明などの療養指導を行わなかった過失を認めた事例

医療過誤・医療ミスのご相談
Warning: Unknown: write failed: Disk quota exceeded (122) in Unknown on line 0 Warning: Unknown: Failed to write session data (files). Please verify that the current setting of session.save_path is correct (/var/sessions) in Unknown on line 0