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くも膜下出血とは|治療・予防法・手術の説明義務について

くも膜下出血とは|治療・予防法・手術の説明義務について

くも膜下出血とは

くも膜下出血とは、頭蓋内くも膜下腔(くも膜と脳表との間の脳 炎髄液腔)への出血である。非外傷性のくも膜下出血の原因は、脳動脈流の破裂が最も多く、約70%から80%を占める。
破裂した脳動脈瘤からの出血はほとんどの場合、一時的に仮止血した状態にあるが、早期に再出血(再破裂)する傾向がある。
くも膜下出血の重症例に応じて、再出血の予防措置をとる。

重症例の分類

重症度 基準徴候
グレードⅠ 無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直をみる
グレードⅡ 中程度から重篤な頭痛、項部硬直をみるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はみられない
グレードⅢ 傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示すもの
グレードⅣ 昏迷状態で、中程度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および、自律神経障害を伴うこともある
グレードⅤ 深昏睡状態で除脳硬直を示し、瀕死の様相を示すもの

グレードⅠ~Ⅲが重要でない例、グレードⅣが比較的重症例、グレードⅤが最重症例と分類される。
再出血予防措置として、後述する脳動脈瘤頸部クリッピング術を含む外科的治療が選択された場合、中程度までの重症例では、早期手術(発症72時間以内)がなされた場合、予後の面で優れた成績が得られる(グレードA)。グレードとは根拠の強さを示すものであり、グレードAは言い切れる強い根拠がある場合を示す。
脳動脈瘤再出血の予防法の外科的治療の1つとして、脳動脈瘤頸部クリッピング術がある。
脳動脈瘤頸部クリッピング術とは全身麻酔下にて開頭を行い手術用顕微鏡(マイクロサージェリー)を用いて脳動脈瘤に到達し、脳動脈瘤周囲を剥離し脳動脈集頸部(首の部分)に専用のクリップをかける方法である。
くも膜下出血にあたり、大量の脳内血腫がある場合、脳組織の一部が頭蓋内腔の区域を越えて移動・突出する脳ヘルニアを引き起こす。
これにより、循環障害や脳幹の圧迫等が生じ、生命維持が困難になる危険があり、致命傷となる場合も少なくない。
したがって、くも膜下出血に合併して脳内血腫などがみられる場合は、クリッピング術に併せて、血腫除去術を行う。

くも膜下出血の治療(三大合併症を防ぐ)

術前管理(再出血、脳ヘルニアを防ぐ)

血圧管理、頭蓋内圧管理、鎮痛

手術(再出血、脳血管攣縮を防ぐ)

クリッピング術、コイル塞栓術

※72時間以降だと脳血管攣縮発生しやすくなるため、72時間以内の手術が望ましい

術後管理(脳血管攣縮による脳虚血(脳梗塞)を防ぐ)

開頭動脈瘤クリッピング術

開頭し直接動脈瘤をクリップで挟んで止血する術式
直接病変を治療する→確実性が高い、血腫の除去も可
侵襲性が高い→重症患者、高齢者に不向き
⇒合併症

頭蓋内出血、脳梗塞、手術による脳損傷

動脈瘤コイル塞栓術

血管内手術により脳動脈瘤を治療する低侵襲な治療法
開頭せずに治療→重症患者、高齢者でも可、脳損傷リスク低、後遺症少
D/N比が2未満、大型巨大、血栓化動脈瘤の場合は根治治療が難しい

くも膜化出血の予防

くも膜化出血の予防としては、原因である脳動脈瘤の破裂を防ぐようにしなければならない。脳動脈瘤とは、脳動脈(特に分岐部)にできる血管のふくらみ、脳動脈の中膜が先天的に欠損しているところに、高血圧や動脈硬化などの後天的な要因が加わって、形成される。そして、無症候性のことが多いが、大きな動脈瘤になると神経圧迫による症状を呈することもある(症候性)。このように、動脈瘤は無症候性の段階では、症状がでないことから、概ね保存的治療(経過観察、血圧コントロール、生活習慣改善)をすることになる。他方で、症候性の場合には、手術(動脈瘤頸部クリッピング術、コイル官塞栓術)をすることになる。ただ、動脈瘤の治療だけでなく、その後の破裂(くも膜化出血)の予防という観点から、無症候性の場合でも、動脈瘤が5ミリ以上であれば、または動脈瘤の破裂の危険性が高い場合(脳底動脈先端部、全交通動脈、内頸―後交通動脈分岐部、D/N比が大きいもの、不整形、blebあり)には手術する場合がある。

他方で、開頭動脈瘤クリッピング術等の手術は、合併症(頭蓋内出血、脳梗塞、手術による脳損傷)のリスクも高いことから、予防のために手術をするか、経過観察するか医師として重要な判断がせまられる。また、患者としても、症状の出ていない段階で合併症のリスクを伴う手術をするか重要な判断をしなければならない。この前提として、医師には、説明義務が生じる。

手術の説明義務に関する裁判例

「医師は,患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては,診療契約に基づき,特別の事情のない限り,患者に対し,当該疾患の診断(病名と病状),実施予定の手術の内容,手術に付随する危険性,他に選択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後などについて説明すべき義務があり,また,医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には,患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上判断することができるような仕方で,それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められると解される(最高裁平成10年(オ)第576号同13年11月27日第三小法廷判決・民集55巻6号1154頁参照)。加えて,・・・本件手術は,原告において左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性をも正確に理解した上で同手術をすることについて強い希望がある場合に限り,その適応があるというべきであるものである。したがって,被告担当医師らは,本件手術に関する説明にあたり,本件手術の必要性,有効性及び安全性(左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性を含む。)について,原告に対して詳細かつ丁寧に説明すべき義務があったというべきである。」(岐阜地方裁判所平成21年11月4日)

のような裁判例があるこのように、開頭動脈瘤クリッピング術の場合には、手術の必要性、有効性及び安全性(左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性を含む。)について、詳細かつ丁寧に説明すべき義務がある。そして、前記裁判例では、動脈瘤の生涯破裂率、後遺症出現の可能性につき具体的な数字を示すことまで要求され、それが患者に正確に理解できる程度の説明がされているかを検討している。

したがって、開頭動脈瘤クリッピング手術で合併症が発生した場合に、手技ミスで問えない場合でも、説明義務違反について問題視することは可能である。

手術についての説明の内容は、手術をするかしないかの判断をする上でも重要なので、しっかりメモしていればよいと考える。また、万一不幸な事が起きた時にも、手術前にどのような説明がされていたかをメモしていれば、何がどのように説明されたか事後的に判断することができることになる。したがって、手術説明の際に、録音やメモをとるべきというのが弁護士としてのアドバイスである。

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