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医療判例研究|家族に対する癌告知

最高裁平成14年9月24日第三小法廷判決(上告審)/仙台高裁秋田支部平成10年3月9日判決(原審)/秋田地裁平成8年3月22日判決(原々審)

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医療判例研究|家族に対する癌告知
最高裁平成14年9月24日第三小法廷判決(上告審)/仙台高裁秋田支部平成10年3月9日判決(原審)/秋田地裁平成8年3月22日判決(原々審)

文責:弁護士・医学博士 金﨑 浩之

事案の概要

被告病院において、虚血性心疾患の診察を受けていた患者に対して、胸部単純X線・胸部CTを実施したところ、被告病院の医師が、多発性の結節影及び胸水貯留が疑われる横隔膜鈍化所見を発見したため、原発巣は不明であるが、悪性腫瘍の多発肺転移と診断し、余命約1年と診断した。そして、当該医師は、患者本人に対する癌告知はするべきではないと考えたが、その家族に対する癌告知もしなかった。本件は、遺族である原告らが、被告病院に対し、当該医師が家族に対する癌告知を怠ったために、患者は家族との充実した余生を送れずに被った精神的損害として、慰謝料請求等を求めて提訴した事案である。
なお、原告らは、患者の妻とその子3名(合計4名)であり、請求額は妻に対し、1000万円、子らに対して各300万円(合計1900万円)である。

秋田地裁平成8年3月22日判決(判時1595号123頁)

1 判決

請求棄却

2 臨床経過(事実経過)

(1) 本件患者は、大正2年10月5日生、死亡当時、77歳の男性である。

(2) 本件患者は、昭和60年11月頃から、虚血性心疾患、期外収縮等により被告病院で診察・治療を受けていた。

(3) 被告病院は、平成元年4月19日、本件患者に対して、胸部単純X線撮影を行ったが、異常所見は認められなかった。

(4) 被告病院は、平成2年2月16日、本件患者の体重減少が認められたことから、消化器系の腫瘍マーカー等の検査を行ったが、陰性であった。

(5) 本件患者は、平成2年6月8日、担当医師に対し、1ヶ月前から左乳頭付近の痛みが出現したことを訴えたが、他覚所見が認められなかったため、被告病院は何らの処置もとっていない。

(6) 被告病院の担当医師は、平成2年10月26日、本件患者に対し、胸部単純X線撮影を実施したところ、両肺に結節影と横隔膜鈍化の所見を発見した。そして、同年11月17日、胸部CT検査を実施し、右肺野に小結節、左肺野にそれよりも小さな結節を数個、縦隔リンパ節の腫脹所見(リンパ節転移を示唆する所見)を発見したため、多発性の転移性肺癌(原発巣不明)と診断した。
そして、担当医師は、患者の年齢(77歳という高齢者であった)や癌の進展度合いからみて、手術適応はなく、有効な化学療法も実施できないと判断して、生命予後は1年程度と考えた。

(7) 担当医師は、平成2年12月8日、本件患者を診察し、胸部単純X線を撮影したが、結節影の大きさに変化はなかった。

(8) 担当医師は、平成2年12月29日、本件患者が、前胸部の痛みを訴えたため、内服の鎮痛薬を処方し、同日の診療記録に「末期癌であろう」と記載した。
そして、担当医師は、本件患者に対し、入院して内視鏡検査を受けることを勧めたが、本件患者は、病身の妻と二人暮らしのため入院はできないと拒否した。同医師は、患者が妻と二人暮らしであるということ以外に、家族関係に関する事情は聴取していない

(9) 担当医師は、平成3年1月19日、患者に対し、内服鎮痛剤を投与した。この日の診察の際に、担当医師は、本件患者から「癌ですか」と質問されたところ、患者本人に癌告知をするのは適切ではないと考え、「癌かどうかを調べるために検査が必要」と回答した。
そして、同医師は、この時、家族に病状について説明したほうが良いと考え自宅に電話をしたが、連絡がつかなかった。そこで、担当医師は、診療記録に「患者の家族に何らかの説明が必要である」と記載した。
この日以降、同担当医師は、本件患者を診察しておらず、後任の医師が担当することになった。

(10) 平成3年2月9日、後任医師が本件患者を診察した。前胸部の疼痛は治まっていた。いつもの鎮痛薬を投薬。

(11) 平成3年3月2日、後任医師による診察。本件患者が再び胸痛を訴えたので、同医師は、鎮痛湿布薬を処方した。後任の医師からも、家族に対して癌告知はなされていない。
なお、この日以降、本件患者は被告病院を受診していない。

(12) 本件患者は、平成3年3月?日、秋田大学医学部付属病院を受診し、多発性肺転移と診断された。

(13) 同大学病院の医師は、平成3年3月19日頃、原告らを呼び、末期癌であることを伝えた

(14) 同大学病院が満床であったことから、本件患者は、平成3年3月23日、秋田赤十字病院に入院した。同病院は、本件患者の病状について、左腎癌、胸骨・肝・肺転移、膵脾直接浸潤と診断し、胸骨の骨髄炎で、細菌の侵入経路である左腎は化膿で腫大している旨説明した。

(15) その後、本件患者は、入退院を繰り返し、平成3年10月4日に死亡した。

3 争点

(1) 被告病院は、平成2年11月より以前に癌を発見すべきであったか。

(2) 被告病院の癌発見後の治療は適切であったか。

(3) 被告病院が、癌発見後、患者及び家族(原告ら)に対し、病状を説明しなかったことが、債務不履行ないし不法行為を構成するか。

4 判決理由

(1) 争点(1)について
平成2年10月26日より以前の検査結果では、癌を疑うべき病的な所見は認められない。

① 本件患者が平成2年6月8日に受診した際には、左乳頭付近の痛み以外に注意すべき所見はない。
② 一般に肺癌に伴う自覚症状は、咳・血痰が多く、慢性疾患で長期通院中の患者が単純な筋肉痛か胸痛を訴えることも少なくない(鑑定)。
③ 本件患者は、心疾患による通院加療中で不整脈もあったことから、本件患者の訴えは、心臓由来の可能性がある(鑑定)。
④ 6月8日以降、痛みが増強することもなかった。
⑤ 原発巣である腎癌は、その比較的特異度の高い血尿・腎部痛・腹部腫瘤がひとつでも発現される頻度はさほど高くはなく、長期に渡って無症状のまま経過することが多い。また、症状発現時には、すでに腫瘍が進行・増大している場合が多い。

(2) 争点(2)について
平成2年11月以降の本件患者に対する治療は、進行性の末期癌(臨床病期Ⅳ期)であることに照らせば、救命・延命のための有効な治療方法がなく、疼痛等に対する対処療法しかなかった状況が認められる。また、被告病院では、原発巣が探索されていないが、仮に原発巣が腎臓癌であることが判明しても、有効な治療法が存在しないことに変わりはない。

(3) 争点(3)について
本件患者がいつも一人で受診していたこと、家族から病状に対する問い合わせもなかったこと、担当医師は検査の必要性を説明していたこと、本件患者は入院検査の勧めを断っていたこと、本件患者は、前触れもなく、平成3年3月2日以降、被告病院に通院しなくなったこと、病院から家族に連絡するにしても、本人に分からないように配慮して行う必要があること、結果的には、平成3年3月、他の病院の医師から癌告知を受けていることを総合的に考慮すれば、裁量を逸脱するとまではいえない

① 高齢者の末期癌に対する有効な治療法が存在しない以上、癌告知がなされなかったからといって、救命・延命に関する治療上の不利益は生じていない。

② 告知の当否、時期、対象、方法について、一義的な基準を設けることは困難で、予測される余命期間・患者や家族の人格・告知希望の有無・医師と患者の信頼関係・告知後の精神的ケアないし支援の見込み等を考慮したうえで、担当医師が広範な裁量権を有する

③ 確かに、死期・余命は患者やその家族にとって重要な情報であり、突然死を迎えるよりも、充実な余生を送れる場合もあろう。しかしながら、末期癌の告知は、ある意味死刑宣告に等しいともいえ、患者に与える精神的衝撃は非常に大きい。また、全ての家族が癌告知を望んでいるとは考えられず、最期まで死を予期しない生活を望んでいることも考えられる。
本件患者はいつも一人で受診していたこと、家族から病状に対する問い合わせもなかったこと、担当医師は検査の必要性を説明していたこと、本件患者は入院検査の勧めを断っていたこと、本件患者は、前触れもなく、平成3年3月2日以降、被告病院に通院しなくなったこと、病院から家族に連絡するにしても、本人に分からないように配慮して行う必要があること、結果的には、平成3年3月、他の病院の医師から癌告知を受けていることを総合的に考慮すれば、裁量を逸脱するとまではいえない

第3 仙台高裁秋田支部平成10年3月9日判決(判時1679号40頁)

1 判決

被控訴人は、控訴人Y1に対し60万、控訴人Y2、Y3、Y4に対し、それぞれ20万円を支払え(一部認容)。
※遅延損害金、訴訟費用の負担は省略

2 臨床経過(事実経過)

前記地裁判決参照。

3 争点

(1) 被控訴人の患者本人に対する説明義務違反(癌告知)の有無

(2) 被控訴人の原告ら(家族)に対する説明義務違反(癌告知)の有無

(3) 損害の内容

4 判決理由

(1) 争点(1)、(2)共通
① 少なくとも、平成2年当時の医療水準に照らせば、医師が末期癌の患者及び家族に対して、癌告知をすべきかどうかは、告知の対象者及びその時期、診療経過、病状、必要な検査・治療の内容、患者の年齢・性格及び対応、家族環境、告知が治療に与える影響、告知後の患者の心理面を支える態勢等の諸事情を考慮したうえで、担当医師の合理的裁量に委ねられているというべきであるが、これは、右諸事情を検討したうえでの専門家である医師の判断を基本的に尊重すべきであるとするものであるから、医師が、積極的に情報収集をしなかったり、収集した情報を真剣に検討しないままに、漫然と告知しないという判断に至ることを許容するものではなく、情報収集の懈怠・収集した情報の検討を怠った場合には、癌告知の検討をしなかった場合に該当し、それ自体が債務不履行・不法行為を構成する(裁量の余地は少ない)。

② 患者本人に対する不告知が相当であるとされた場合には、医師には、当然に家族に対する告知の適否を検討すべき義務があるから、医師が、その合理的裁量を逸脱して、患者の家族に告知しなかった場合にも、債務不履行・不法行為になりうる。

(2) 争点(1)について
被控訴人の担当医師が、患者本人に対して癌告知をしなかったことは、医師としての裁量の範囲内の行為である。

① 担当医による初診当時、本件患者の病状が末期癌であったことはほぼ間違いない。
② 本件患者は77歳という高齢であったうえ、終始一人で通院しており、担当医師に対して、妻と二人暮らしであると述べていた。
③ 担当医師が本件患者を診察したのは、わずか二ヶ月間に4回だけであって、医師と患者との間の強い信頼関係が築かれるには不十分な期間であった。
④ 本件患者から癌告知について希望が述べられたことはなかった。

(3) 争点(2)について
被告医師は、家族に対する癌告知の適否を検討する義務を尽くしていないので、債務不履行・不法行為を構成する

① 担当医師は、家族に対する告知を必要と判断し、同日中に電話をしたが通じなかった旨述べているが、これを裏付ける客観的証拠はなく、その信用性の判断には慎重にならざるを得ない。
② 仮に、自宅に電話したことが事実であったとしても、その後は妻への連絡を断念して全く試みていないことから、果たして妻への連絡を真剣に検討していたのか否かを強く疑わざるを得ない。
③ 担当医師は、カルテに「家族との連絡が必要」である旨の記載をしているが、これを直接、後任の担当医師に引き継ぐことをしていない。
④ 本件患者には、妻のほかに3人の子があったのであるから、本件患者から詳細に家族関係を聴取していれば、そのうちのいずれか適当な者を選択して、癌告知の適否を検討することができたはずである。
⑤ 本件患者の通院歴はかなり長期に及んでいるのであるから、家族関係に関する情報収集は、過去のカルテやかつての担当医師に問い合わせをするなどして情報を収集することもできたのに、これを行った形跡もない。
⑥ 担当医師は、本件患者に対して、内視鏡検査入院を勧めたところ、患者がこれを拒否したと述べるが、カルテにそのような記載はなされておらず、これを客観的に裏付ける証拠はない。
⑦ 患者に対し、検査がどうしても必要であることを納得させるために工夫したことを窺わせる証拠もない。
担当医が「癌であるかどうかを調べるために検査が必要である」と述べたにもかかわらず、本件患者があくまでも検査を拒否するということは、やや不自然である。

(4) 争点(3)について
より早い段階で家族に癌告知されていれば、本件患者は、より早い段階で、家族の手厚い保護を受けたり、家族とより多くの時間を過ごすこととなり、より充実な余生を送れたといえ、被控訴人の担当医師が癌告知を怠ったことで、この可能性が奪われた。

① 本件患者には、3人の成人した子があり、そのうち長女は、本件患者の自宅近所に居住し、日常的な交際があった。
② 長男も秋田市内に居住していた。
③ 秋田大学医学部付属病院による告知の結果、家族間に格別の混乱も生じていない。

5 損害額の算定

(1) 慰謝料総額は120万円
控訴人らは、本件患者の死亡の半年以上前に、他の病院から癌告知を受けており、本件患者が上記機会を奪われた期間は、せいぜい数ヶ月である。
(2) 120万円の慰謝料は、法定相続分に応じて按分
(3) 右慰謝料額の算定には、家族らに対する苦痛も含めて評価しているから、このほかに、家族固有の慰謝料を認めることはできない。

第4 最高裁平成14年9月24日第三小法廷判決(判時1803号28頁)

1 判決

上告棄却

2 判決理由

(1) 医師は、診療契約上の義務として、患者に対し、診断結果、治療方針等の説明義務を負担する。

(2) 患者が末期的疾患に罹患し余命が限られていると診断した医師が、その旨を患者本人に告知すべきではないと判断した場合には、その重大性に照らすと、当該医師は、診療契約に付随する義務として、少なくとも、患者の家族等のうち、連絡が容易な者には接触し、同人を介して、更に接触できた家族等に対する告知の適否を検討し、告知が適当であると判断された場合には、その診断結果を説明すべき義務を負う。
なぜならば、告知を受けた家族は、医師の治療方針を理解したうえで、物心両面において患者の治療を支え、また、患者の余命がより安らかで充実したものとなるように家族としてのできる限りの手厚い配慮をすることができることになり、このような家族による協力と配慮は、患者本人にとって、法的保護に値する利益であるというべきだからである。

(3) 当てはめ
被上告人の担当医師の対応は、余命が限られていると診断された末期癌患者に対するものとして不十分なものであり、家族等に接触して告知する義務に違反する。
① カルテや保険証の記載から、患者の家族関係を確認し、接触を試みることは容易であったのに、それを試みていない。
② 本件患者の家族について、告知を受けることに格別障害となる事情は認められない。

3 裁判官上田豊三の反対意見

原判決を破棄し、本件を原審に差し戻すべきである。

(1) 癌告知義務の内容を定めるにあたっては、平成2~3年当時の医療水準に照らして判断すべきであるが、平成元年当時、厚生省が末期医療のケアのあり方に関する検討会を設置し、報告書をまとめている。そして、これを踏まえて、「プライマリ・ケアにおけるがん末期医療のケアの在り方研究班」により、「がん末期医療に関するケアのマニュアル」が作成され、厚生省・日本医師会から発行されている。
(2) 同マニュアルによれば、末期状態の告知の際に十分考慮すべき状況として、①告知の目的がはっきりしていること、②患者・家族に受容能力があること、③医師と患者・家族との関係が良いこと、④告知後の患者の精神的ケア、支援ができること、の4つを掲げている。
(3) 日本医師会生命倫理懇談会も、平成2年1月9日、同マニュアルを会員に配付し、詳細に報告している。
(4) 平成2年当時の医療水準を判断するに際しては、このマニュアルを十分に斟酌すべきである。
(5) 末期癌の患者の家族に受容能力があるか否か、医師と患者・家族間の関係が良好であるか否かを判断するに当たっては、家族の状況等を承知する必要があるわけであるが、そのためには、患者側において、家族を医療機関に同道するなど医療機関に対し協力することが必要となると解すべきである。
(6) 原審はこの点に関する検討が不十分である。
(7) 原審は、平成2年当時の癌告知に関する医療水準を明らかにしたうえで、これに照らし、末期癌の告知につき、医療機関が診療契約上どのような義務を負うのか、どのような注意義務を負うのかを明らかにすべきである。

第5 考察

1 最高裁判決の意義

本最高裁判決は、患者及びその家族に対する癌告知の在り方として、重要な判例であると評されるが、先例としての意義は、今後、大きく縮小していくものと思われる。
理由は、以下の二点である。
第一に、癌治療は日進月歩で進歩しており、今日、多くの悪性新生物は、根治を望めなくても、生命予後が改善して相当程度の延命を図ることが可能となっている。特に、抗癌剤を初めとする化学療法の分野では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬等の開発により大きく進歩し、多くの臨床研究が予後の改善を報告している。加えて、癌の組織型毎に特異的に発現している遺伝子も次々に同定され、遺伝子解析の研究も進んでいることから、将来的には患者毎のオーダーメイド医療も可能だと言われている。そのため、患者や家族に対して、積極的に告知を行う実益は益々高まっており、今後もこの傾向は続くと思われる。
第二に、インフォームド・コンセントと自己決定権が極めて重視されている今日にあっては、末期癌に罹患していることを告知しないことは正当化されにくく、むしろ積極的に告知していくことが時代の要請であるともいえる。特に、上記のとおり、癌治療における生命予後が改善し、治療の選択肢が増えていることに照らすと、病態とその予後の説明を怠ることは、こうした患者の選択権を奪うことにつながる。このような時代背景にあっては、医療側も患者側との紛争を回避するために、よほどのことがない限り、家族だけではなく、患者本人に対しても、積極的に癌告知を行っていくことになると思われる。

2 説明義務違反に関する実務への影響

前述のとおり、この最高裁判決の先例的意義は大きくないとしても、実務的には、示唆に富む判示部分も散見される(特に、原審の判示した部分)。
例えば、原審は、医師が内視鏡検査と入院の必要性について患者に説明したにもかかわらず、患者がこれを拒否したという医療側の主張に対して、「検査がどうしても必要であることを納得させるために具体的な工夫をしたことを窺わせるに足りる証拠はない」としている。実務では、検査の必要性について、どれだけ詳細に説明がなされたのか、カルテ等にも記載がなく、水掛け論になるとが少なくない。そして、説明義務違反の有無についての立証責任の帰属について、明確に判示した最高裁判例がなく、下級審の判断も分かれており、決着がついていないことも相俟って、しばしばこのような反論が医療側から提出される。
また、同原審は、医師が患者に対し、「癌かどうかを調べるために、検査する必要があると説明したにも関わらず、患者があくまでも検査を拒否したというのは、やや不自然である」とした点も重要である。実務では、癌の可能性を説明したうえで検査の必要性も説明したにも関わらず、患者がこれを拒否したという医療側の反論にもしばしば遭遇するからである。癌の可能性を認識している患者が検査を拒否するには、それなりの理由があるはずであるが、このような反論は、医療側から無神経に提出される。
したがって、これらの原審判示部分は、これまでの医療側の訴訟態度に一石を投じるものとして評価できる。

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